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筆跡事件簿Story3

クレジット会社の恐るべき不誠実2program

注 この文章は平成23年4月に書かれたものです。

こんなサインで本人確認ができるのか

さて、そのクレジットカードと大野さんのサインを拡大したのが図Aである。そして、17万円の伝票への署名が図Bである。酔っていてうまく書けないので2回署名している。図Bについては、大野さんは署名そのものは自分がしたものと認めている。

それはさておいても如何なものだろう。図Bの署名は、「大●宗治」の4文字中、かろうじて読めるのは姓の「大●」の2文字のみである。あなたが金融機関の担当者だとしたら、このA・B二つの署名を同一人と認めて支払いをするだろうか。知人の銀行員は、当然支払えないと言った。もし、銀行がこの程度の署名で支払いをしたとしたら「過誤払い」として訴えられても文句は言えないだろう。

私がプロの筆跡鑑定人として言えることは、図Bは「鑑定不能」であるということである。鑑定不能というのは、この乱れ切った資料では本人とも別人とも言えないということである。つまり、筆跡鑑定人として本人とは認められない署名で、信頼委託を受けたクレジット会社が金を引き落としてしまっている。

さらに、資料C・9万円のほうは、大野さんが認めていないサインである。この署名はさらに乱れて、全文字がまったく読めない。この署名で本人確認が出来たとして、取り立てているのである。

クレジット会社は、「悪用されることを防ぐためにカードの裏に署名をせよ」と言っている。つまり資料Aの署名は、本人確認のために記入することになっているわけで、顧客も当然それを期待して署名している。それがこのケースでは全く意味を持たない結果になっている。

クレジット会社は、調査の結果、資料Cのサインを本人と認めて取り立てたとういうことである。つまり、資料Cと資料Aの筆跡は同一人の筆跡だというのだ。これは、筆跡鑑定人の立場から見れば到底納得できない。

Cについては、署名していないもう一つの根拠もある。それは、大野さんが認めている17万円の署名よりも、1時間以上も早い時間に署名したことになっていることだ。「支払いであれだけ揉めて、ようやく署名したのに、それよりも早い時間に署名したなどということはあり得ません」。しかし、思い返してみると、「カードの有効性をチェックします」ということで、その時間にカードを渡している。どうやらそのときにカードを切られたようだ。



クレジット会社は速やかに大野さんに返金すべきである

新宿警察も典型的なぼったくりといい、しかも電話連絡も繋がらない所在不明の店に、一流のクレジット会社がこのような状態で金を支払っている。(少なくとも大野さんからは取り立てている)。

顧客である大野さんから、「身の危険を感じて止むを得ずした署名だから支払いはしない。解約する」という通知を受けていながらである。さらに、9万円は本人がサインを否定しているのである。これが、顧客から信任を受けて活動する著名なクレジット会社に許されることであろうか。

大野さんは、今回のトラブルでクレジット会社の極めて不親切な対応や、部署名・担当名を名乗らず、責任者と連絡のつけられないクレジット会社の仕組みに翻弄された。クレジット会社の、このような責任回避的な仕組みに強い不信感を持っている。

大野さんは、クレジット会社への内容証明で、「カード会社の持つ社会的影響力や責任は大きく、このような犯罪の助長になるようなことがあってはならないと私は考えており、たとえ意図的に対応を遅らせているのでなくとも対応改善の必要があると思います」と述べている。

私は、たまたま筆跡鑑定上の相談を受けた筆跡鑑定人であるが、このクレジット会社は、対応の不適切さの謝罪を含めて即刻全額(26万余)を返済する義務があると思う。力になってくれる弁護士さんはいないだろうか。